
リョウシキリガクなんていうウットウシイ話題が続きますが、書いている本人が面白がっているものだからいたし方ありません。それに、近代科学において、これほど理論の根本的なところで専門家の間に解釈の一致を見ない分野なんて、ほかに見当たりません。私は、宇宙の起源、虚数の時間!?、クオークだの、超ひもだのということには、あんまり興味がわかないのですけれど、なぜ物質が粒子であると同時に波でありえるのか、ということに関しては、これだけは出来ることなら生きているうちに納得した上であの世に行きたいなあ、と思います。まあ、あの世で納得できるなら、それでもいいか、とも思いますが。
さて、城壁の残骸をぐるりと回って、さらに草むらをどんどん歩いてゆくと、また木戸があります。鍵がかかっていますが、簡単な金属の鉤式で、自由に開け閉めできるようになっています。草原はこういう柵でいくつかの区画に囲い込まれています。どうしてこういう風に柵がしてあるのかは、また、近いうちにお話します。

城壁の跡は、もう少し近づいてみると、こんな感じです。ずいぶん古そうに見えますが、たかだか17世紀半ばころのものです。ローマの遺跡の方が、よほど立派ですね。市民革命(清教徒革命)の議会派を指揮したのは、オリバー・クロムウェルです。もう、20年以上も前、私が始めてイギリスに来たときに泊まったロンドンのホテルが、クロムウェルロードというところにあって、なんだか歴史を感じさせる通りの名前だなあ、と思って妙に感激したのを覚えています。その、クロムウェルロードには、有名な自然史博物館なんかもあります。サイエンスに興味のある方は、必見です。

その牧草地の中にも、所々に、昔の城壁の跡が残っています。遠めに見ると、モダンアートのオブジェのようです。
ところで、「量子力学の解釈問題」を読みながら、ふと、考えたのですが、どうして陽子と電子の電荷は、正確に同じで正負だけが反対なんでしょうか。同じでなければ、中性の原子が電荷を持ってしまいすから、あたりまえといえば、あたりまえなのですけれど。それにしても、自然界で、正負の違いがあるとは言え、異なったものがまったく同じ物理量を持つというのは、すごく不自然な気がします。何か、正負の性質を持たない電気素量の素のような粒子があって、それに正負の性格を与える粒子が結合することで電子と陽子が成立していると考えれば、きれいな絵になるなあ、と思います。で、ウィキで調べてみると、「なになに、陽子は+2/3eの電荷を持つアップクオーク二つと-1/3eの電荷を持つダウンクオークひとつとから出来ている云々・・・」
うーん、蚊帳吊りウサギの仮説、破れたり。でも、素粒子物理って、なんだか胡散臭いですよねえ。自然のおおもとが、ほんとうに、どうしてこんなに(必要以上に)複雑な構造をしていなければいけないのか、どうしても腑に落ちません。

その糸杉を背にして、ぐるっとあたりに視線をめぐらせても、閉園時間の迫った公園には、ほとんど人影がありません。入り口の木戸にかぎがかかる前に、そそくさと、反対側の牧草地へ通り抜けます。

下の記事に書いたとなりの町の公園は、天気の良い日に散策するにはとても良いところです。古城跡の公園といっても、少し歩けば、テムズ川沿いの広大な牧草地とつながっていて、何の遊具のあるわけでもない、ただの草原です。こういう牧草地の本来の機能は、川が氾濫したときに市街地まで水が浸らないようにするための緩衝地帯なんですね。木戸をくぐって入ると、突然、目の前に、なんとも唐突に一本の糸杉が現れます。

旭屋書店がロンドンから撤退して以来、イギリスには本格的に日本の本を在庫する本屋はなくなってしまいました。今ではコンビニの本・雑誌コーナー程度のものが、ロンドン三越、その他の雑貨店の中に残っているのみです。必然的に、和書は日本のアマゾンから買うことになり、一回の送料を節約するために、たいてい、数冊をまとめ買いします。
最近、量子力学関係、その他の本をいくつか買い込みました。
1 量子化学入門(下)、米澤貞次郎ほか、化学同人
2 量子力学の解釈問題、コリン・ブルース、和田純夫訳、講談社
3 シュレディンガーの猫がいっぱい、和田純夫
4 量子力学 観測と解釈問題、高林武彦、海鳴社
5 入門UNIXシェルプログラミング、ブルース・ブリン、山下哲典訳、ソフトバンク・クリエイティブ
その少し前に買った本・・・
6 高校数学でわかるシュレディンガー方程式、竹内淳、講談社
7 高校数学でわかるマクスウェル方程式、竹内淳、講談社
8 高校数学でわかるボルツマンの原理、竹内淳、講談社
9 忘れてしまった、高校の数学を復習する本、柳谷晃、中経出版
10 生命とは何か 物理的に見た生細胞、シュレーディンガー、岡小天ほか訳、岩波文庫
高校程度の数学をさらうだけで、何とか量子力学とその周辺分野(電磁気学、統計熱力学)を手っ取り早く復習したいという安易な考えがストレートに現れているのが、6-9。ところが、ついついいらぬところに気が散るのが私の悪い癖で、それは10を見ればわかります。最近買った1は福井謙一学派の手になる名著で、安易な「高校程度の・・」作戦が失敗に終わり、本格的に量子力学を復習せざるを得なくなったことを物語っています。それが面倒くさくて仕方ないものだから、思いっきり気が散っているのが良くわかるのが、2-4ですね。5は、まあ、必要に迫られてということです。
この週末は、3の「シュレディンガーの猫がいっぱい」をゆっくり読みました。量子力学の多世界解釈については、恥ずかしながら、ほとんど何も知りませんでしたので、「ああ、こういうことを、一生懸命考えている人がいるんだなあ」と、妙に感心したものの、肝心の本論については、腑に落ちないことばかりです。そもそも、こういう本来数学の言葉で記述されるべき問題を、啓蒙書の中で平易な言葉で取り扱うのには、本質的な困難があるわけで、おそらく、私の疑問のほとんどは、私の無知と数学力の不足から来るものだとは思います。2もじっくり読んでから、また、気が向けば何か書くかも知れません。
ひとつだけ、無知をさらすのを覚悟で考えたことを書いておけば、波動関数で記述される確率的な(あるいは、多世界の重なりあいとしての)電子のふるまいというのは、有機化学者にとっては、ある意味で日常的なもので、むしろいまさら観測によって位置の定まった粒子などに収束されては困るようなところがあります。われわれが、分子間の相互作用などを考えるときは、電子をあくまで電子雲というか、軌道として取り扱っているのであって、粒子としての電子を意識することはほとんどありません。薬物と生体分子の相互作用なども同じことです。このような相互作用はサイズ的には、マクロとミクロの中間に位置するものでしょうけれど、その相互作用の結果が人間の生理状態に大きな影響を与えることを考えれば、マクロな現象といわざるを得ません。マクロな現象である以上は、数ある多世界の中から、その観測者というか、当の生体分子の持ち主である人間と住む世界を同じくする電子のみがかかわってるはずですが、問題なのは、そういう粒子として収束してしまった電子では、現象としての有機反応を説明できないのです。うーん、なんだか、私の言いたいことを、意味がわかるように書くのは、ほとんど不可能なように思えてきましたので、続きはまたの機会に。
写真は、近所の街の公園です。もともとは、市民革命のころに取り壊された古城跡なんです。

なんだかんだで、GAMESSという分子の電子状態を計算するソフトをいじくることに、ほとんどのエネルギーを吸いとられていた過去数ヶ月でありましたが、かなり煮詰まりました。メモリ量の問題から32ビットのウィンドウズに見切りをつけたのが昨年の暮れのこと。その後、新しいパソコンにリナックス(64ビット版Fedora10)をセットアップし、GAMESSをコンパイルしてインストール。SMP環境で4CPUコア並列計算が安定して走るようになったのが今年の一月半ば。さらに、二月には、何を血迷ったか、壊れて動かなくなっていた女房の古いPCにパーツを足して再生し、既存のリナックスマシンとつなげて、2ノードのリナックスクラスタに仕立てるということを始めてしまいました。筆舌に尽くしがたい(ちょっと大げさか)悪戦苦闘を強いられ、縁もゆかりもない人にまで多大な迷惑をかけた結果、ついに一週間ほど前、安定運用にこぎつけました。
写真が、そのDIYリナックスクラスタの勇姿であります。3台のPCがあって、一見、3ノードのクラスタのようですが、真中のマシンは汎用ウィンドウズ機で、メールやウェブの閲覧、デジカメ画像の加工、ギターの録音などに使っています。これは一種のウィンドウズファイルサーバになっていまして、Sambaでリナックスマシンとつながっています。黒いのがマスタノード。これが、NFS、NISサーバで、左端の小さいほうのクライアントノードとの間で、ユーザのホームダイレクトリ、GAMESSのインストールされている/optなどを共有しています。CPU・RAMはマスタがQ6600・8GB、クライアントがQ9650・4GB。それぞれ、1TBのスクラッチ専用ディスクを持っています。ちょっと世間の常識では信じられないかもしれませんが、これでもメモリが不足する場合があるので、それぞれのノードに、知るひとぞ知るインテルの高速ssd、X-25Eの32GBを載せて、全容量をswap領域(仮想メモリ)に設定してあります。一種のRAMディスクですね。これを通常のハードディスクでやろうとすると、I/Oが遅すぎてジョブがとまります。ノード間の通信は、ギガビットのイーサネット。マスタだけでなくクライアントからも、SNATでマスタをルータとしてインターネットにつながるようにしました。小さいながらも、立派な2ノード8CPUコアのクラスタです。
ちなみに会社で使っているクラスタは、32ビットのものが17ノード、34コア。64ビットのものが、20ノード、80コアですので、まったく比べ物になりませんが、それでもハードに工夫をしただけのことはあって、ベンチマークをとってみると、自作クラスタは会社のクラスタに比べてcpuコアあたり1.5倍程度の処理能力を持っているようです。まあ、この程度のDIYマシンでも一昔前のスーパーコンピュータ並みの演算能力があるわけですから、IT技術の進歩のスピードには驚くばかりです。
今回の作業の成果といえば、気兼ねなしに使える自分専用のリナックスクラスタが手に入ったことはもちろんですが、セットアップの過程を通して、リナックス・ユニックス環境にかなり慣れたことでしょう。科学技術計算(プログラム開発)のための環境としては、リナックスがウィンドウズに比べて圧倒的に優勢な理由がようやく飲み込めたところです。私自身は、まだまだ初心者の域を出ないのですけれど。

「なぜ」という言葉は不思議です。昔からそう思っていました。「なぜ」には、まったく意味の異なった二つの用法があるにもかかわらず、何の断りもなく、どちらの場合にも、同じ「なぜ」が使われるからです。もう少し突っ込んで言えば、同じ「なぜ」が使われるがゆえに、まったく質の異なった問いが、あたかも本質的に同じ種類の問いであるかのような誤解を、言葉を使うもの、つまり、私たちに与えているように思われます。具体的には、二種類の異なった用法とは、次のようなものです。
用法1
「なぜおまえは、無銭飲食なんかしたんだ?」
「いや、あんまり腹が減っていたもので、、つい、、、」
用法2
「なぜ、りんごは木から落ちるのか?」
「りんごと地球の間に万有引力が働くからである」
お分かりでしょうか。用法1は、意識や感情を持つものに対して、ある言動を取るに至った成り行きを問うものです。一方、用法2では、意識とは無縁の無生物に起こる現象について、その現象の背後にある物理法則は何か、ということをたずねています。私も、もちろん、日常的に用法2の「なぜ」を使います。会社で実験データを見ながら、「なぜ、こんな結果になったんだろう」と、悩まない日はありません。用法1の「なぜ」とは違った、用法2専用の「なぜ」に相当する言葉があったらなあ、と思うことも多いのですが、ほかに言葉がないので仕方なく使っています。仕方なく使っているうちに、自分がいま使った「なぜ」は、どちらの「なぜ」だったのか、自分でもわからなくなったりして、いかにも気持ちが悪いのです。
自然現象に「なぜ」を持ち込むのは、ある意味で自然の擬人化です。決して悪いことではありませんが、よほど注意していないと、知らず知らずのうちに落とし穴にはまります。他人を落とし穴にはめようと、あえて用法2をセンセーショナルに使うことも頻繁におこなわれます。「なぜ、生物は進化するのか」なんて、よく聞くフレーズです。
自然の中に何らかの意思を見出そうとするのは、人間の本質、いわば、本能だとおもいます。宗教の成立が、このことと深くかかわっていることには、疑いの余地がありません。ヒトは群れを作って生きる社会的な動物ですから、群れの構成メンバーの行動からその意思を読み取って、そのつど適切な対応を取ることが生存のためには不可欠です。考えてみれば、ヒトは、その昔、サルだったころから、長い進化の過程でこの能力をひたすらに磨き上げてきたました。夫の浮気をかぎつける妻の臭覚などは、ほとんど超能力といっても良いレベルに達していることがあります(あるそうです)。ん、ちょっと脈絡ないかな・・・。まあ、そういうわけで、その優れた能力を勢いあまって適用範囲外の無生物にまで適用してしまうのも、無理からぬことなのかもしれません。

いや、下手をしたらそろそろ2月になるのですけれど・・・新年早々、はげしく出遅れております。何とか生きていますが、公私にわたるあまりのドタバタのおかげで、新年はイギリスから日本に向かう日航機上で向かえる羽目になったくらいです。 それにしても、「梅、犬、自動車」くらいは覚えていてほしかったのになあ・・・と書けば、わかる人には、わかるかな。
新曲、仕上がっているのですが、そんなわけでいつになったら録音できることやら。2009年が、皆さんにとって良い年になりますように。

パラレル・コンピューティングというのは、日本語では並列計算というんでしょうか。要するに、ひとつの計算をいくつかの作業部分に分割し、それを複数のCPU上で同時に走らせて計算速度を上げることです。パラレル・コンピューティングというと、普通は、たくさんのパソコンをネットワークでつなげたPCクラスタが思い浮かびますが、最近では一台のPCでも並列作業が可能です。CPUの高速化にも既存の技術では限界が見えてきたところで、インテルやAMDのCPUは軒並み複数のCPUコアを持ったマルチコアタイプになってきたからですね。おかげで、タンパク質・薬物複合体などの、原子数が1000を越えるような大きなシステムのab initio法による量子力学計算が、なんとか、普通の家庭用PCの射程距離内に入ってきました。
Ab initio(アビニシオと読みます)のことは、まあ、また改めて書くとして、宅録日記に書いたように、最近、新しいPCを手に入れまして、ネットからフリーでダウンロードできるGAMESSという量子力学計算ソフトを、夜な夜な、ゴソゴソと動かしています。新しいPCのスペックは、Core2-quad 、2GB RAM、500GB Hard Driveですから、特に高性能のPCというわけでもありません。OSは、ビスタが入っていたのをXPに入れ替えました。
それにしても、こういう特殊なソフトを走るようにするのは、結構大変な作業です。いろいろなところから、いろいろなものをダウンロードしてきては、作業環境を整備して、ようやくテストインプットが走るようになったと思っても、いざ自分のジョブとなると、データの書式や、キーワードの使い方が今ひとつ良くわからなかったりで、エラーと異常終了の山を築いていました。
特に、この一週間ほどずっと悩んでいたのが、どうやったらCore2-quadの4つのCPUを同時に使った、並列計算ができるのかということだったのです。どうやっても、ひとつのCPUしか動かすことができず、せっかくのマルチコアも宝の持ち腐れ状態。それが、昨日の夜、執念のグーグルサーチが奏効して、バッチファイルの設定を少しいじるだけでOKだということを発見しました。計算化学のベテランから見れば、まあ、なんともレベルの低い話なんでしょうけれども、こちらは初心者ですから、実に、単純にうれしいわけです。
というわけで、4つのCPUがほぼフラットアウトに動いている状態での、タスクマネジャのスクリーンショットを大公開したいと思います。ああ、うれしいなあ。ちなみに、このジョブは、かれこれ6時間ほど動いていますが、一向に終了する気配がありません。ベンチマークから類推するに、予想計算時間は、24-48時間の予定なのですが、さて、どうなりますか。