シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える(その2)
先日、私の勤務する会社の事業部のひとつが従業員・土地・建物ごと他社に売られてしまったことは書きました。全社員600名の約三分の一が対象になります。やれやれ、大変なことだと思っていたら、今度は逆にカリフォルニアの会社を買収したとのアナウンスがありました。というわけで、わが社はわずか2週間のうちに、事業部構成的にはまったく別の会社になってしまいました。欧米のバイオベンチャーは、言ってみれば、AVコンポのようなもので、さまざまな機能を持つユニット(あるいは個人)の寄せ集めです。カセットデッキやターンテーブルのような陳腐化したパーツは次々と切り捨てられ、まだまだ有用なユニットでさえ、新しい機能をもった新製品が出たといえば、容赦なくアップグレードされてしまいます。しかし、こういう大胆な経営ができるのも、切り捨てられた従業員がそれぞれの市場価値に応じて、別会社に再就職してゆけるだけの雇用の流動性が確保されているからこそです。だいたい、会社に切られる前に優秀な人は、実力に見合うだけの待遇が得られなければ、さっさと他社へ移って(ヘッドハントされて)いってしまいます。
ひるがえって、日本はどうかというと、終身雇用制の崩壊などと言っても、それはリストラによる解雇や肩たたきが日常茶飯事になってきたと言うだけのことであって、実質は旧態依然。本当に実力主義にのっとった流動的でダイナミックな労働市場が形成されたと言うには、ほど遠い状態です。そんな中で、今年の初め、ファイザー日本法人の名古屋中央研究所の閉鎖が発表されました。ファイザー中央研究所は総勢380名。これだけの数の研究員の首が一気に飛べば、リクルートエージェントには求職相談の案件が殺到し、日本のファーマ・バイオ関係の中途採用市場は大混乱を起こすのが当然の成り行きと言うものですが、それが不思議なほど静かだと言うのです。何かあるんだろうな、と思っていたら、案の定、先月の日経ネットにこんな記事が載りました。
「製薬世界最大手、米ファイザーの中央研究所(愛知県武豊町)が来年4月にも研究者らの出資による新薬開発のベンチャー企業として独立する。米本社が閉鎖を決めたことから、約80人の研究者が中心となって新会社を設立し、研究施設や新薬候補物質などの資産を譲り受ける。国内外の投資ファンドからも資金調達 する考え。日本では例が少ない従業員による企業買収(EBO)によって再出発する。新会社には研究者らが経営の主導権を握れる比率を出資する意向で、社長は現在研究所長の長久厚氏で調整中。ファンドから運転資金3年分にあたる100億円前後を調達する計画で、交渉を進めている。事業が軌道に乗った数年後の株式上場を視野に入れる」
続く
ギターで知り合ったのですが、2~3年前に薬学部の大学院を卒業した女子学生がこの会社に就職し愛知県に住むと聞きました。
その後の音信はありませんが、元気でいてくれるといいのですが・・・。
Comment by 越後屋 — 09/10/2007 @ 08:52 am
越後屋さん、こんにちは。薬学部の大学院卒と言うことであれば、MRではなくて研究所勤務でしょうから、おそらくこの騒動にまきこまれているでしょうねえ。でも、大学を出て2、3年の実務経験をつんだ人というのが、一番求人案件の多いところですから、心配ないんじゃないでしょうか。かえってよい経験と言うか、違った職場で色々な仕事の仕方を覚えるチャンスかもしれません。問題なのは、私と同世代の40-45歳以上の人たちです。とても人ごととは思えませんので、他所様の会社のことながら、差し出がましく、こうしてクドクド書いているわけです。
Comment by 蚊帳吊りウサギ — 09/10/2007 @ 07:40 pm