Kayatsuri Blog

29/10/2007

ポンセのイ短調組曲より、ジーグの練習、進捗状況など

Filed under: 音楽・ギター — 蚊帳吊りウサギ @ 09:09 pm

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相変わらず、ぼちぼち、休み休み練習しています。案外すんなりと、練習を始めて一週間ほどで、ゆっくりなら通して暗譜で弾けるようになったので、もう一月以上も、いわゆる「弾き込み」をしています。その割には、どうも仕上がりに納得が行きません。こういう、ある程度のテンポの必要な快活な曲には、どうしても、弾きたいテンポ、自分が適正と感じるテンポと、実際に破綻なく弾けるテンポの間のギャップをどうするかという問題が付きまといます。まあ、その埋まらないギャップを、あれこれ工面して埋めてゆくのも、アマチュアの楽しみというものでしょうね。

手持ちのCDから、ナクソスのアダム・ホルツマンの録音を調べてみると、メトロノームで148くらいのスピードです。これは、ちょっと速すぎるように感じます。できることなら132くらいで弾きたいのですけれど、私の安全運転領域は112から120くらいで、テンポが132に接近するにしたがって指数関数的な演奏破綻確率の増大が観測されます。実際には、テンポが理想値132に近づいても、おそらく演奏の好ましさは、リニアに(一次関数的に)しか増加しないでしょうから、テンポアップの努力というのは、実に非生産的な作業であるといえます・・・・うーん、何を分析しているもんだか。

実は、週末に録音してみたのですが、演奏破綻関数のテンポ依存性を確認したのみに終わりました。ひらたく言うと、がんばって速めのテンポで弾いたらボロボロだったということです。ところが、悔しいので、ボツテイクの中の使えそうな部分を切り貼りしてつなげてみたら(このバージョンはアップはしません)案外聴ける演奏になっていたので驚きました。つまり、自分のボロボロだという主観的な判断とは裏腹に、個々の部分はさほど大きく破綻していないということです。ただ、部分というのは少しずつ大きくしてゆけば、やがて全体になるものやら、はてまた、どこかに非連続的に変化する特異点のあるものやら、よくわからない部分もあります。

22/10/2007

シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える(その6)

Filed under: がん・創薬 — 蚊帳吊りウサギ @ 07:46 pm

スピーデルの起業の最大のドライビングフォースは、アリス・ハックレイのSPP100(アリスキレン)に対する執念であったことは疑いの余地がありません。では、ファイザー日本法人スピンアウトの場合はどうでしょう。スピンアウトを設立しようという人たちの守りたかったものは何なのか。それは、自分たちの雇用なのか、それとも、無念にもパイプラインからこぼれ落ちてゆく運命にあった有望候補化合物なのか。雇用の確保が主な理由であっても、別に悪いことはありません。こんな方だっていらっしゃるでしょう。たとえば、研究所の近くに家も建てた。定年まで後十年だ。ここで失職してなるものか。うん、これはよくわかります。それはそれで、立派な起業の動機だけれども、では具体的にどんなビジネスモデルを画くのか。ビジネスモデルに説得力のある限り、投資家にとって起業家の個人的な思惑などどうでもよいことです。

というわけで、ここからが肝心のビジネスモデルのアナリシスになるわけですが、残念ながら私には荷が重く、かなり息切れしてきましたので、「シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える」は、ひとまずここでお休みです。個人的には、スピンアウトはファイザーとは一定の距離をおいた方が良いのではないか。また、ケミストリーの機能を持たない日本のバイオベンチャーとのコラボレーションなども視野に入れていってくれればよいのになあ、と思っています。日本の会社にとって、地理・言語・文化的に距離の遠い海外の創薬CROとお付き合いするのは、やはり、けっこう骨の折れることですから。

15/10/2007

シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える(その5)

Filed under: がん・創薬 — 蚊帳吊りウサギ @ 08:18 pm

ここまで読んでこられた方なら容易に想像がつくと思いますが、その企画書の内容というのは、次のようなものでした。(あくまで周辺情報からの推測ですが)

1.ノバーティスはアリスキレンの開発権をR&Dベンチャーに譲渡(ライセンスアウト)する
2.ベンチャーは十分に採算のとれるようなアリスキレンの工業的製造法を開発し、第2相までの臨床試験を行い、POC(プルーフ・オブ・コンセプト、具体的なターゲット疾病に対する薬の効果のこと)を確立する
3. この時点でノバーティスは、優先的なコールバックの権利(アリスキレンの開発権を買い戻す権利)を有する

もちろん、開発がうまく行くとは限りません。また、うまく行ったとしても、何かの理由でノバーティスがコールバックの権利を行使しない場合は、どこか別の製薬会社へのライセンスを検討しなければなりません。別のライセンス先が見つからなければ・・・ベンチャーは多額の借金を抱えて倒産の憂き目を見ることになります。さて、その役員会で役員の一人が「で、そのR&Dベンチャーというのはどこの会社のなのかね?」と、アリスに尋ねたかどうかは知りませんが、もし尋ねたのだとしたら、アリスはこう答えたはずです。「その会社は、これから、私がノバーティスを退職して、設立するのです・・・・」 スピーデルという創薬ベンチャーは、ただひとつ、アリスキレンという薬を世に出すためにのみ生まれてきた、ほんのわずかの中枢機能以外のすべてを外部委託でまかなう、バーチャル・カンパニーであったのです。

その後の詳細をはしょって結論だけを書けば、スピーデルは見事アリスキレンの開発に成功し、コールバック・オプションを行使したノバーティスは開発を継続して、昨年ついにアメリカと欧州の当局から新薬承認をとりつけるに至りました。世界初の経口レニン阻害薬の誕生です。スピーデル自体も、循環器系を中心にいくつものパイプラインを抱える立派な中堅ベンチャーに成長しました。このスピーデル設立のいきさつを思い出すたびに、創薬ベンチャーをはじめる人というのは、大航海時代の幕開けのころ、地球は丸いという(当時の)仮説を信じて大西洋にのりだしていったコロンブスのようだなあ、と思います。違うところといえば、大西洋を西へ西へと進んでも、海の水が轟音とともに無限の深遠へと流れ落ちているような巨大な滝に出会うことはありませんが、新薬の開発の場合には、そういう途方もない滝が結構あちらこちらに見られるということでしょう。私も会社でデスクに向かっていると、なんとなく遠くの方から地響きのような滝の音が聞こえるような気がすることがあります。果たして、わが社は黄金の国、ジパングへたどりつけるのか?

ところで、ファイザーの話はどうなったのかな?

続く

12/10/2007

シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える(その4)

Filed under: がん・創薬 — 蚊帳吊りウサギ @ 07:33 pm

今回のファイザーのリストラで閉鎖になったのは日本の研究所だけではないのですけれど、職を失った研究員たちの再就職のチャンスについては、すでに書いたように、日本と欧米では雲泥の差があります。このあたりにEBOによるベンチャーの設立という道が選択された理由があるのでしょう。また、ファイザー本社としても、日本の雇用の特殊性を考えれば、道義的にスピンアウトを積極的に支援せざるを得なかったものと思います。しかし、ファイザー本社のトップマネジメントを納得させるのは、大変な骨折りだったことと想像されます。結局、380名の転進先の内訳は、ファイザー内の他部署に吸収(90名)、転職(210名)、スピンアウトに参加(80名)と報道されました。

このスピンアウトの話を聞いて、私が一番最初に思い出したのはスピーデルという会社のことでした。スピーデルを創立し、現在もCEOとしてそのビジネスを引っ張っているのは、アリス・ハックスレイ。アリスのスピーデル設立のいきさつは、こうです。チバ・ガイギーのバイオテクノロジー部門に研究員として職を得たアリスは、その後めきめきめきと頭角を現し、チバ・ガイギーとサンドが合併しての現在のノバーティス・ファーマとなった時には、グローバル・プロジェクト・マネジャーとして、癌・循環器系薬の臨床開発のマネジメントを担当していました。製薬会社同士の合併の際には、お互いのパイプライン(開発候補化合物)の統合・整理が行われ、当然のことながら、開発候補から外れる化合物も出てきます。チバ・ガイギーとサンドの合併に際して、パイプラインからこぼれ落ちた化合物の中にSPP100(アリスキレン)がありました。アリスキレンの化学構造が複雑すぎて、工業規模の合成に費用がかかりすぎる点、また、当時、レニン阻害剤の薬効のはっきりとした証明がなかった点が、開発候補から外れた理由となったのです。アリスキレンは、レニンという酵素を阻害して血圧を下げる働きをします。アリスキレンに大きな期待をかけていたアリスは、この決定に大いに憤慨して、ノバーティスの役員会に一通の企画書を提出します。その企画書の内容というのは・・・・

続く

09/10/2007

シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える(その3)

Filed under: がん・創薬 — 蚊帳吊りウサギ @ 07:46 pm

ファイザー中央研究所の閉鎖は、実は世界中の事業拠点を巻き込んだ1万人規模にのぼる人員削減プランの一環です。ファイザーがこんな大胆なリストラ策を打ち出した背景には、主に二つの要因があります。ひとつは、2010年に迫った主力商品の高脂血症薬リピトールの特許切れです。ご存知の方も多いと思いますが、欧米では特許切れと同時にほとんどの新薬が安価な後発ジェネリックに置きかえられてしまいします。リピトールはファイザーの売り上げの20%近くを稼ぎ出していると言われていますので、その損失を補完するのは容易ではありません。しかし、世界最大の製薬企業がこのような状態にただ手をこまねいているはずもなく、リピトールを超える超大型新薬との期待のかかるコレステロール降下薬トルセトラピブの臨床試験は、最終段階の第三相を迎えて、当局による承認も目前。経営は安泰・・・・のはずだったのです。昨年の12月までは。

ところが、まさに晴天の霹靂。12月2日、ファイザーはこの8億ドルもの研究開発費をつぎ込んだトルセトラピブの開発中止を発表しました。15000人規模の臨床試験の結果、脳卒中や心臓発作などを防止するはずのトルセトラピブが、あろうことか、その服用によって逆に死亡や心血管障害のリスクが増大させることがわかったためです。トルセトラピブは、CETPというたんぱく質の働きを阻害して、いわゆる善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減少させます。実際に、臨床試験でも善玉コレステロールの増加は、はっきりと確認されていますので、トルセトラピブによる死亡率の上昇はまったく予期せぬ結果であり、現在でもその原因ははっきりしません。このあたりに、ほとんど無数とも思えるコントロール機構が複雑に作用しあって維持されている生き物の体の働きに、人間が浅薄な理解でデザインした薬物をもって干渉することの、本質的な危うさがあるといえます。だからと言って、薬を飲むな、薬を開発するな、と言う立場を、私はとりませんが、人間の体には、風が吹けば桶屋が儲かる式の不可思議があることを、よく肝に銘じておくべきだとは思います。

さて、話がやや横道にそれてしまいましたが、リピトールの特許切れ、トルセトラピブの開発失敗を踏まえて、ファイザーは大型リストラに踏み切ったわけです。

続く

08/10/2007

シリーズ・日本の創薬ベンチャーを考える(その2)

Filed under: がん・創薬 — 蚊帳吊りウサギ @ 07:53 pm

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先日、私の勤務する会社の事業部のひとつが従業員・土地・建物ごと他社に売られてしまったことは書きました。全社員600名の約三分の一が対象になります。やれやれ、大変なことだと思っていたら、今度は逆にカリフォルニアの会社を買収したとのアナウンスがありました。というわけで、わが社はわずか2週間のうちに、事業部構成的にはまったく別の会社になってしまいました。欧米のバイオベンチャーは、言ってみれば、AVコンポのようなもので、さまざまな機能を持つユニット(あるいは個人)の寄せ集めです。カセットデッキやターンテーブルのような陳腐化したパーツは次々と切り捨てられ、まだまだ有用なユニットでさえ、新しい機能をもった新製品が出たといえば、容赦なくアップグレードされてしまいます。しかし、こういう大胆な経営ができるのも、切り捨てられた従業員がそれぞれの市場価値に応じて、別会社に再就職してゆけるだけの雇用の流動性が確保されているからこそです。だいたい、会社に切られる前に優秀な人は、実力に見合うだけの待遇が得られなければ、さっさと他社へ移って(ヘッドハントされて)いってしまいます。

ひるがえって、日本はどうかというと、終身雇用制の崩壊などと言っても、それはリストラによる解雇や肩たたきが日常茶飯事になってきたと言うだけのことであって、実質は旧態依然。本当に実力主義にのっとった流動的でダイナミックな労働市場が形成されたと言うには、ほど遠い状態です。そんな中で、今年の初め、ファイザー日本法人の名古屋中央研究所の閉鎖が発表されました。ファイザー中央研究所は総勢380名。これだけの数の研究員の首が一気に飛べば、リクルートエージェントには求職相談の案件が殺到し、日本のファーマ・バイオ関係の中途採用市場は大混乱を起こすのが当然の成り行きと言うものですが、それが不思議なほど静かだと言うのです。何かあるんだろうな、と思っていたら、案の定、先月の日経ネットにこんな記事が載りました。

「製薬世界最大手、米ファイザーの中央研究所(愛知県武豊町)が来年4月にも研究者らの出資による新薬開発のベンチャー企業として独立する。米本社が閉鎖を決めたことから、約80人の研究者が中心となって新会社を設立し、研究施設や新薬候補物質などの資産を譲り受ける。国内外の投資ファンドからも資金調達 する考え。日本では例が少ない従業員による企業買収(EBO)によって再出発する。新会社には研究者らが経営の主導権を握れる比率を出資する意向で、社長は現在研究所長の長久厚氏で調整中。ファンドから運転資金3年分にあたる100億円前後を調達する計画で、交渉を進めている。事業が軌道に乗った数年後の株式上場を視野に入れる」

続く

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