真夜中の訪問者
昨夜は去年の夏に死んだ親父の夢を見た。死んだはずなのに、どういうわけか大阪の家に帰って来ていて、顔色も良い。髪も黒々としていて、ずいぶん若返った感じだ。「父さん、どうしたの?」と私が言うと、隣にいた母が「肝臓のがんが進んで、肝臓が死んでしまったから、がんもいっしょに死んでしまったのよ。だから、元気になったの」。ああ、そうか、なるほど。まあ、元気になったのは何よりだ。いや、待てよ。そんなことがあるものだろうか。そう思っているうちに、ふと思い出した。あの日、俺は真っ白に焼け上がった父の骨を箸で拾って骨壷に詰めたのではなかったか。そう気づいて振り返ると、もうそこには父の姿はなかった。
目が覚めると、明け方の三時半だった。くそ、何であの親父のために俺が夜中に目を覚まさなければいけない? ひどく腹が立ったが、すぐにまた瞼が重くなってきた。と、トントンと寝室の扉をノックする者がいる。いや、あの扉は、学生時代に暮らした札幌のアパートの扉じゃないか・・・「はい、ちょっと待って」と言って起き上がると、カーテンの隙間から街灯のナトリウムランプのオレンジが寝室の白い壁を照らしていた。ここはイギリスだ。ああ、札幌の父さんが尋ねてきてくれたのだろうか、なぜかそう思った。日本に帰っている女房から、義理の父が亡くなったという電話を受けたのは、つい数日前のことだ。